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50人未満の企業も対象へ!ストレスチェック義務化拡大に向けた人事・労務の実務対応ガイド

人事労務テラスの公式ブログ見出し。オフィスで女性と白衣の男性が向かい合い、50人未満企業向けのストレスチェック義務化拡大を案内。2026年5月25日号】【。

労働安全衛生法の改正により、これまで「従業員50人以上」の事業場にのみ義務付けられていたストレスチェック制度が、いよいよ「50人未満の小規模事業場」にも拡大されることとなりました。 ※直近の労働安全衛生法改正により、公布から最長3年以内である「2028年春頃」までに、全事業所への義務化・施行が予定されています。


日本の企業の約9割を占める中小企業にとって、この法改正は非常に大きなインパクトを持ちます。


「いつから始まるのか」「費用はどれくらいかかるのか」「社内に産業医がいないがどうすればいいのか」など、不安を抱えている経営者や人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。


本記事では、ストレスチェック義務化拡大の背景から、具体的な実施手順、助成金の活用方法、そして単なる「義務」で終わらせず離職防止や採用強化に繋げる秘訣まで、徹底的に解説します。



1. なぜ今?ストレスチェック義務化が「50人未満」に拡大される背景

ストレスチェック制度は、労働者の心理的な負担の程度を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ(一次予防)ことを目的として、2015年に創設されました。当初は50人以上の事業場が義務、50人未満は「努力義務」とされていました。


では、なぜ今になって50人未満の企業にも義務化が拡大されるのでしょうか。主な理由は以下の3点です。


  • 精神障害の労災補償状況の悪化 厚生労働省のデータによると、仕事の強いストレスによる精神障害の労災認定件数は年々過去最多を更新しています。特に小規模事業場において、メンタルヘルス対策が遅れている現状が浮き彫りになっています。


  • 人手不足の深刻化と労働環境の変化 働き方改革が進む一方で、慢性的な人手不足により、一人ひとりの従業員にかかる業務負荷やプレッシャーが増大しています。従業員の心の健康を守ることは、企業存続の必須条件となっています。


  • 健康経営の推進 大企業を中心に広まった「健康経営」の波を、日本経済を支える中小企業全体に波及させるという国の方針があります。


2. 対象となる「50人未満の事業場」の定義とカウント方法

法改正への対応を進める上で、まず確認すべきは「自社が対象になるか」、そして「誰を対象に実施するのか」という点です。労働安全衛生法における人数のカウント方法は、一般的な感覚と異なる場合があるため注意が必要です。


「事業場」単位でのカウント 企業全体の人数ではなく、「支店」「営業所」「店舗」などの「事業場(働く場所)」単位でカウントします。


実施対象となる労働者の条件 正社員だけでなく、以下の条件を満たすパートタイム労働者やアルバイト、派遣社員もストレスチェックの対象となります。


  • 期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者も含む)

  • その事業場の通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上働く者

対象者を漏れなくリストアップすることが、実務の第一歩となります。

3. 小規模事業場が直面する「3つの壁」と解決策 50人未満の企業がストレスチェックを導入する際、大企業にはない特有の課題(壁)が存在します。

課題(壁)

発生する理由とリスク

解決策のアプローチ

産業医がいない壁

50人未満の事業場には産業医の選任義務がないため、高ストレス者への医師による面接指導を誰に頼めばいいか分からない。

地域産業保健センター(地さんぽ)の無料相談窓口を活用する、またはスポットで契約できる外部の産業医紹介サービスを利用する。

担当者の業務負担の壁

人事・総務を兼任している担当者が多く、実施計画の策定、質問票の配布・回収、結果のデータ化などの事務作業に割く時間がない。

厚生労働省が提供する無料の「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を活用するか、Web上で完結する安価な外部委託サービスを導入する。

プライバシー保護の壁

従業員数が少ないため、「誰がどんな回答をしたか」が経営者や他の従業員に特定されやすく、従業員が正直に回答できない恐れがある。

実施者(医師や保健師等)や実施事務従事者を外部委託するなど、経営陣に個人の結果が絶対に漏れない厳格な情報管理体制を構築・周知する。



4. 【完全マニュアル】ストレスチェック実施のための5つのステップ

制度を法令遵守のもと、スムーズに運用するための具体的な手順を解説します。

➀導入の準備・ルールの策定(方針の表明) まずは経営者が「メンタルヘルス対策に取り組む」という方針を社内に表明します。 その後、衛生委員会(50人未満の場合は関係労働者の意見聴取)で、誰を実施者とするか、いつ実施するか、結果をどう管理するかなどの社内ルールを定めます。

➁実施体制の構築(役割分担) ストレスチェックの実施には、厳格な権限規定があります。 人事権を持つ経営者や役員は「実施者」や「実施事務従事者(データ入力等の実務担当)」になることはできません。外部機関を上手く活用して体制を整えましょう。

➂質問票の配布・記入・回収(実施) 国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」などを用いて従業員に回答してもらいます。 回収した質問票は、人事権を持つ者に見られないよう、封筒に入れて密封回収するなどの配慮が必要です。

➃結果の通知と高ストレス者への対応 実施者から従業員本人へ直接結果が通知されます。 企業側には「誰が高ストレスだったか」は、本人の同意がない限り分かりません。高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合、企業は医師による面接指導をセッティングする義務があります。

➄集団分析の実施と職場環境の改善 個人の結果を集計し、部署やチームごとのストレス傾向を分析する「集団分析」を行います。 ※努力義務ですが、企業にとって最もメリットが大きいプロセスです


5. 実施しないとどうなる?隠された2つの大きなリスク

「罰則がなければ後回しでいいか」と考えるのは非常に危険です。 ストレスチェックを怠ることで、企業は以下の甚大なリスクを抱えることになります。

  • 安全配慮義務違反による損害賠償リスク 労働契約法第5条において、企業は「労働者の安全と健康に配慮する義務」を負っています。ストレスチェックを実施せず、結果として従業員がうつ病などの精神疾患を発症した場合、「会社は予見義務・結果回避義務を果たさなかった」とみなされ、数千万円規模の損害賠償を請求される判例が増加しています。

  • 社会的信用の失墜と「ブラック企業」認定 メンタルヘルス対策を怠っている事実がSNS等で拡散された場合、採用活動に致命的な悪影響を及ぼします。特に若手層は、企業のコンプライアンスや働きやすさをシビアにチェックしています。

6. コストを抑える!小規模事業場向けの「助成金」活用術

資金力に余裕のない中小企業を支援するため、国はストレスチェックに関する助成金制度を用意しています。

ストレスチェック助成金(独立行政法人労働者健康安全機構) 従業員数50人未満の事業場が、医師や保健師等にストレスチェックの実施を委託した場合、その費用の一部が助成されます。

  • 助成対象 ストレスチェックの実施費用、およびストレスチェック後の医師による面接指導や面接指導後の意見聴取にかかる費用。

  • 申請のポイント 事前に要件を確認し、年度ごとの予算上限に達する前に早めに申請手続きを行うことが重要です。


☆ストレスチェックを「採用・定着」の最強の武器に変える

法改正によるストレスチェック義務化の拡大は、小規模企業にとって確かに負担増に感じられるかもしれません。しかし、発想を転換すれば「自社の組織風土を劇的に改善し、従業員エンゲージメントを高める絶好のチャンス」でもあります。

単に質問票を配って回収するだけの「こなすだけの業務」にしてはいけません。集団分析を通じて「どの部署の負荷が高いのか」「上司の支援は行き届いているか」を可視化し、具体的な業務改善や人員配置の見直しに繋げましょう。

「社員の心の健康を第一に考え、改善アクションを起こす企業」という事実は、現在働いている社員の離職(退職)を強力に防ぐだけでなく、採用ホームページでアピールすることで、優秀な人材を引き寄せる強力なマグネットになります。



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