【起業シリーズ③】会社を作った。社員はいない。……それでも社会保険?

会社を作った。
登記も終わった。会社の名前も決まった。名刺だって用意した。
さあ、いよいよ自分の会社がスタート!
……と、期待に胸を膨らませていたところへ、ひょっこり顔を出すのが「社会保険」の問題です。
「えっ、社会保険?」
「うちは、まだ社員なんていませんけど……」
「社長といっても、自分一人なんですけど……」
そう思われる方も、きっと少なくないでしょう。
会社を作ったばかりの頃は、売上のこと、取引先のこと、資金繰りのことなど、考えることが山積みです。できれば、余計な出費は増やしたくない。そんな時期に「社会保険に加入してください」と言われたら、少々困ってしまいますよね。
今回の起業シリーズでは、そんな「社長一人の会社と社会保険」について、一緒に考えてみたいと思います。
1.社長一人の会社でも、社会保険に入らないといけないの?
⑴社員がいなくても法人は社会保険の対象になる?
最初に、基本的なルールからお伝えしましょう。
株式会社や合同会社などの法人の事業所は、常時従業員を使用する場合、原則として社会保険の強制適用事業所となります。ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金保険のことです。
「いやいや、社員を雇ったら必要になるものじゃないんですか?」
そう考えるのも無理はありません。
でも、社会保険のルールは、社員の人数だけで決まるわけではありません。
例えば、法人を設立して、社長が一人で会社の仕事をし、その対価として役員報酬を受け取っている場合。このようなケースでは、原則として社長自身が社会保険の加入対象になります。
つまり、「社員がいないから、社会保険は関係ない」とは言えないのです。
⑵「会社の適用」と「社長本人の加入」は少し違う話
ここで、一つ覚えておいていただきたいことがあります。
それは、会社が社会保険の適用事業所になることと、社長本人が被保険者になることは、分けて考える必要があるという点です。
会社の適用とは、社会保険制度の対象となる事業所かどうかという問題。
一方、被保険者資格とは、その事業所で働く人が社会保険に加入する資格を持つかどうかという問題です。
似ているようですが、同じ話ではありません。
例えば、社長が実際に無報酬で、ほかに会社に常時使用される役員や従業員もいない場合には、通常、新規適用届を提出する状況にはありません。
反対に、社長自身が被保険者となる場合には、一般の従業員が一人もいなくても、会社の新規適用手続きが必要になります。
ただし、法律上の適用事業所の要件と、個々の人の被保険者資格は別のものです。「被保険者がゼロなら、どんな会社でも新規適用は不要」と単純に考えないようにしましょう。
では、どうすれば社長本人が社会保険の加入対象になるのでしょうか。
その判断で重要になるのが、これからお話しする「役員報酬」と「勤務実態」です。
2.役員報酬がゼロなら? 1万円なら? 加入の分かれ目を考える
「まだ売上がないから、自分の給料はゼロにしている」
「会社が軌道に乗るまでは、役員報酬を受け取らないつもり」
起業直後には、こうしたケースもあるでしょう。
実は、社会保険を考えるうえで、役員報酬の有無は重要なポイントになります。
⑴役員報酬を受け取っている場合
社長が会社の業務に継続して従事し、その対価として役員報酬を受け取っている場合は、原則として健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。
「社長は社員ではないのに?」
そう思われるかもしれません。
確かに、社長などの法人役員は、一般的な従業員とは立場が異なります。
それでも、法人から仕事の対価として報酬を受け取る役員は、その職務内容や勤務実態などに応じて、社会保険の被保険者として取り扱われます。
⑵役員報酬がゼロの場合
一方、役員報酬をまったく受け取っていない場合はどうでしょう。
実際に無報酬の役員は、通常、その法人における健康保険・厚生年金保険の被保険者にはなりません。ただし、ここは誤解しないでいただきたいところです。
「役員報酬をゼロにすれば、社会保険の問題はすべて解決」ということではありません。
社長本人が本当に無報酬なのか、ほかに加入対象となる人がいるのか、といった事情を整理する必要があります。また、その法人で社会保険に加入しない場合でも、社長本人の健康保険や年金の加入関係がなくなるわけではありません。
国民健康保険・国民年金、配偶者の扶養、別の勤務先での加入など、ご自身の状況に応じて、どの制度の対象になるのかを整理しておきましょう。
⑶役員報酬が月1万円なら? 3万円なら?
さて、ここでもう一つ、気になることがありませんか?
「役員報酬がゼロなら加入しなくていいのは分かった。じゃあ、月1万円なら?」
「月3万円だったら?」
「いったい、いくらから社会保険に入らなければならないの?」
実は、この疑問には少々やっかいなところがあります。
というのも、法人役員の社会保険の加入資格には、「役員報酬が月額○万円以上なら加入、○万円未満なら加入不要」という一律の金額基準が設けられているわけではないからです。
「えっ、金額だけでは決まらないの?」
そう思われるかもしれませんね。
加入資格を考える際には、役員報酬の金額だけでなく、その役員が実際にどのような仕事をしているのか、継続的に会社の業務に携わっているのか、支払われる報酬が仕事の対価と認められるのか、といった事情も関係してきます。
つまり、「報酬があるか、ないか」だけでなく、「どのような仕事をして、どのような報酬を受け取っているか」が重要なのです。
⑷「勤務実態」って、具体的にどんなこと?
ここで出てきた「勤務実態」という言葉。
何だか難しそうですが、要するに、その役員が会社の仕事に実際にどのように関わっているか、ということです。
例えば、次のような場面を想像してみてください。
ケース① 社長が毎日、会社の仕事をしている
営業先を回ったり、取引先と打ち合わせをしたり、請求書を作ったり。
社長一人で、会社の仕事をほとんど切り盛りしている。
こうしたケースでは、会社の業務に継続して従事している実態が比較的分かりやすいでしょう。
ケース② 役員にはなっているけれど、会社の仕事はほとんどしていない
例えば、家族が会社の役員に名前を連ねているものの、普段は業務に携わらず、ときどき経営上の相談を受ける程度。このような場合、役員という肩書があることだけで、当然に社会保険の加入対象になるわけではありません。
実際に担当している仕事や、会社の業務への継続的な関わり方などが判断材料になります。
ケース③ 別の会社で働きながら、自分の会社も経営している
平日は会社員として勤務し、夜間や休日に自分の会社の仕事をしている。
最近では、こうした経営者も珍しくありません。
この場合も、「すでに勤務先で社会保険に入っているから、自分の会社では関係ない」とは限りません。設立した法人での職務内容、業務への関わり方、役員報酬の実態などを踏まえて判断することになります。
なお、複数の事業所で社会保険の加入要件を満たす場合には、「二以上事業所勤務」に関する届出が必要になることもあります。
⑸では、週に何時間働けばいいの?
ここも気になるところでしょう。
「週20時間以上なら加入?」
「週に2日しか働いていなかったら?」
実は、法人役員については、一般の短時間労働者に適用される労働時間の基準を、そのまま当てはめて判断するわけではありません。また、役員の仕事は、机に向かっている時間だけでは測れないものです。取引先との交渉、経営判断、契約の締結、資金繰りの検討なども、会社の仕事に関わる重要な活動です。
そのため、単純に出勤日数や勤務時間だけで判断するのではなく、実際の職務内容や会社への関与の程度などを総合的に考える必要があります。
⑹判断に迷ったら、まずはこんなことを整理してみましょう
ご自身の勤務実態を考えるときは、次のようなことを振り返ってみてください。
- 日常的にどのような会社の仕事を担当しているか
- その仕事をどのくらいの頻度で行っているか
- 一時的な手伝いなのか、継続的な業務なのか
- 会社の経営や業務運営にどのように関わっているか
- 役員報酬は、どのような仕事の対価として支払われているか
日々の業務記録や取引先とのやり取り、役員報酬の決定・支払記録なども、実態を整理する際の参考になります。もちろん、これらの項目にいくつ当てはまれば加入対象になる、という単純なチェックテストではありません。
ただ、「自分はこの会社で、実際に何をしているのか」を整理することは、加入資格を考えるための大切な第一歩になります。
⑺「本当に無報酬」と「まだ支払っていない」は違う?
ここで、もう一つ注意していただきたいことがあります。
それは、「役員報酬をゼロにしていること」と「役員報酬は決まっているけれど、まだ支払っていないこと」は、同じではないという点です。
例えば、次の二つのケースを考えてみましょう。
ケースA 役員報酬を月額ゼロ円と決めている
会社を設立したものの、売上がまだないため、当面は社長の役員報酬を支給しないことにしている。実際に報酬も発生しておらず、ほかの名目による仕事の対価も受け取っていない。
ケースB 役員報酬を月額20万円と決めているが、まだ支払っていない
会社の資金繰りが厳しいため、決定した役員報酬を支払わず、未払金として計上している。
どちらも社長の手元に現金が入っていないという点では同じかもしれません。しかし、ケースBでは、会社が社長に対して報酬を支払う義務を負っている可能性があります。そのため、単に「お金を受け取っていないから無報酬」と判断することはできません。
役員報酬をいつ、どのような内容で決定したのか、報酬が実際に発生しているのか、未払計上されているのか、といった事情を整理する必要があります。もちろん、未払報酬があるという事実だけで、自動的に社会保険の加入資格が確定するわけでもありません。
ここでも、仕事と報酬の実態を踏まえた判断が重要になります。
⑻「形式的な無報酬」や、極端に低い役員報酬にはご注意を
「だったら、役員報酬をゼロにしておけばいいのでは?」
「月1万円くらいにしておけば、社会保険料の負担を減らせるのでは?」
起業したばかりで資金繰りに余裕がないとき、そう考えること自体は不思議ではありません。ただし、本当に無報酬の場合と、書類上だけゼロにしている場合とでは、話が違ってきます。
例えば、帳簿上は「役員報酬ゼロ」としているのに、実際には社長の私的な生活費を会社が継続して負担していたとしたら、どうでしょう。あるいは、役員報酬は支給しないことにしているものの、別の名目で定期的にお金を受け取っていた場合は?
このようなときは、その支払いが本当に業務上の経費なのか、それとも役員の仕事に対する報酬なのか、支払いの目的や内容を調べる必要があります。もちろん、会社のために立て替えた経費を精算したからといって、それが直ちに役員報酬になるわけではありません。
大切なのは、お金の名前ではなく、その支払いの実態です。
また、役員報酬を月額1万円や3万円など、極端に低く設定した場合も同様です。「少額だから社会保険には加入しなくてよい」とは限りませんし、反対に、少額の支払いがあれば無条件に加入資格が認められるわけでもありません。
報酬の金額だけでなく、その報酬がどのような職務の対価なのかを考える必要があります。
⑼後から加入対象と判断された場合のリスク
もう一つ、注意していただきたいことがあります。
それは、実際には加入要件を満たしていたのに、加入手続きをしていなかった場合のリスクです。
後になって加入対象だったと判断されれば、過去にさかのぼって資格取得の手続きや保険料の納付が必要になることがあります。会社負担分だけでなく、本人負担分の精算も問題になるため、思いがけない資金負担が生じる可能性があります。また、役員報酬の決め方や会社から社長への支払い方によっては、税務上の取扱いにも注意が必要です。
「社会保険料を節約できると思っていたのに、後から余計に大変なことになった……」
そんなことは、できれば避けたいですよね。
ただし、ここで誤解していただきたくないのは、役員報酬をゼロにすることや、低額に設定すること自体が、直ちに問題になるわけではないということです。会社の経営状況によっては、無報酬という選択が実態に合っている場合もあります。
重要なのは、社会保険への加入を避けるために形式だけを整えるのではなく、会社の実態に合った役員報酬を設定することなのです。
3.社会保険料はいくら? 会社と社長の負担を考える
⑴「社員もいないのに……」と思うのも無理はありません
起業すると、思っていた以上にお金が出ていくものです。
会社の設立費用、事務所の準備、パソコン、電話、ホームページ……。
大きな設備投資をしない業種であっても、小さな出費が積み重なります。
そして何より、売上が安定するまでは、できるだけ会社にお金を残しておきたいところです。
そんなときに社会保険料という継続的な負担が増えるのは、決して小さな話ではありません。
「最初の半年くらいは様子を見たい」
「売上が増えてから加入したい」
そんな気持ちになることもあるでしょう。
ただ、社会保険は、会社の売上や利益が安定したら加入するという制度ではありません。
加入要件を満たしているのであれば、経営状況にかかわらず、必要な手続きを行うことになります。
少々厳しく感じるかもしれません。
けれども、ここで大切なのは、単に「加入しなければいけない」と知ることだけではないと思うのです。
社会保険料の負担も含めて、無理のない会社運営を考えること。
起業したばかりだからこそ、最初の段階で整理しておきたい問題なのです。
⑵社会保険料は会社と本人で負担する
さて、ここまで読んで、こんな疑問が浮かんでいませんか?
「加入が必要なのは分かった。でも、いくら払うの?」
おそらく、起業したばかりの社長にとっては、ここが一番気になるところかもしれません。
健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と本人が半分ずつ負担します。
例えば、社長が社会保険の加入対象となる場合、その役員報酬に応じた標準報酬月額などをもとに保険料が計算されます。そして、社長本人の負担分だけでなく、会社も保険料を負担することになるのです。
⑶役員報酬30万円なら、会社の負担は30万円だけ?
ここで、ちょっと考えてみてください。
仮に社長の役員報酬を月額30万円に設定したとします。
会社が準備すべきお金は、その30万円だけではありません。
会社負担分の社会保険料も必要になるため、役員報酬額以上の支出を見込んでおく必要があります。
つまり、社長の給料を決めることは、会社の固定費を決めることでもあるのです。
また、実際の保険料は、加入している健康保険の保険料率や年齢、標準報酬月額などによって変わります。具体的な金額を把握したい場合は、適用される保険料率と標準報酬月額を調べ、会社負担分と本人負担分をそれぞれ計算してみましょう。なお、社会保険料を負担することには、病気やけがをしたときの保障、老後の年金など、将来の生活を支える意味もあります。
単なる出費と考えるだけではなく、保障の内容も含めて理解しておきたいところですね。
4.加入が必要なら、何をすればいい? 手続きの流れを整理しましょう
「うちも社会保険に入らないといけないらしい」
そう分かったら、次は手続きです。
とはいえ、最初から難しい書類をすべて理解する必要はありません。
まずは、手続きの仕組みと全体の流れをつかんでおきましょう。
⑴「新規適用」と「被保険者資格取得」は何が違うの?
ここで、少し似たような名前の手続きが二つ登場します。
「新規適用」と「被保険者資格取得」です。
何だか難しそうですが、実はそれほど複雑な話ではありません。
「新規適用」は会社(事業所)の手続き、「被保険者資格取得」は加入する人の手続きと考えていただくと、分かりやすいでしょう。
新規適用届は、会社が新たに社会保険の適用を受けるための届出です。
一方、被保険者資格取得届は、その会社で社会保険の加入対象となる社長や従業員について、一人ひとりの資格を届け出るものです。
例えば、社長一人の会社でも、役員報酬や勤務実態などから社長自身が加入対象となる場合には、通常、新規適用届と資格取得届の両方が必要になります。
⑵役員報酬がゼロなら、新規適用届は必要ないの?
では、役員報酬がゼロで、社会保険の加入対象となる人が誰もいない場合はどうでしょう。
ここでは、次の3つを整理してみましょう。
① 社長本人に、本当に役員報酬が発生していないか
実際に無報酬であれば、通常、社長本人はその法人での社会保険の加入対象とはなりません。ただし、役員報酬が決定されているものの未払いとなっている場合には、単なる無報酬とは区別する必要があります。役員報酬の決定内容、発生時期、帳簿上の計上状況、実際の支払状況を調べ、報酬と勤務の実態を整理します。
② 役員報酬以外の名目で、実質的な仕事の対価が支払われていないか
名目が役員報酬でなくても、実質的に役員の仕事の対価と認められる金銭や現物給付であれば、社会保険上の報酬として扱われる可能性があります。会社が支払った費用の内容や目的を調べ、業務上の実費精算と、社長個人に対する報酬に相当する支払いとを区別することが大切です。
③ ほかの役員や従業員など、会社で常時使用される人がいないか
社長が実際に無報酬で、ほかにも会社で常時使用される役員や従業員がいない場合には、通常、新規適用届を提出する状況にはありません。一方、ほかに会社で働く人がいる場合には、その人の雇用形態や勤務実態などを調べ、事業所の適用要件と本人の加入資格をそれぞれ判断することになります。
ここで大切なのは、「会社が社会保険の適用事業所に該当するか」と「誰が被保険者となるか」を別々に考えることです。
判断が難しい場合は、役員報酬の決定・支払記録、業務内容、役員や従業員の勤務状況を整理したうえで、管轄の年金事務所や社会保険労務士に、事業所の適用関係と個人の資格取得の取扱いを具体的に相談するとよいでしょう。
⑶社会保険の加入手続きは、どのように進めるの?
新たに適用を受ける事業所で、加入対象となる人がいる場合には、次のような流れで手続きを進めます。
ステップ① 会社と加入対象者の状況を整理する
法人の設立日、役員報酬の有無、勤務実態、ほかの役員や従業員の状況などを整理します。
そのうえで、事業所がいつから社会保険の適用対象となるのか、誰がいつから被保険者となるのかを考えます。
ステップ② 必要な書類を準備する
登記事項証明書など、会社の状況や提出方法に応じて必要となる書類を準備します。
また、社長本人や従業員の資格取得手続きに必要な情報も整理しておきましょう。
ステップ③ 年金事務所へ届出をする
新たに社会保険の適用を受ける会社では、原則として「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出します。また、社長本人や従業員が加入対象になる場合には、「被保険者資格取得届」も必要です。
これらの届出は、いずれも原則として、該当する事実が発生してから5日以内に行います。
ただし、ここで少し気を付けたいことがあります。
新規適用届と資格取得届では、5日間を考える基準となる事実が異なるのです。
⑷提出期限は、会社を設立した日から5日以内?
新規適用届は、原則として、その事業所が新たに適用事業所となった事実が発生してから5日以内に提出します。
一方、被保険者資格取得届は、その人が被保険者資格を取得した事実が発生してから5日以内です。
「どちらも会社の設立日から数えればいいのでは?」
そう考えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
例えば、会社の設立当初から社長が業務に従事し、役員報酬も発生していて、社会保険の加入対象になるケース。この場合は、設立当初からの事業所の状況や社長の加入資格をもとに、適用開始日や資格取得日を考えることになります。
一方、会社を設立したときは本当に無報酬の社長一人で、ほかに常時使用する人もいなかったものの、数か月後から社長の役員報酬が発生し、加入対象になったケースではどうでしょう。その場合は、会社の設立日ではなく、後に適用事業所となった日や被保険者資格を取得した日が、手続きを考える基準となります。
また、役員報酬を決定した日、報酬が発生する日、実際に銀行口座へ振り込まれる日は、必ずしも同じではありません。初めて役員報酬が振り込まれた日を、そのまま資格取得日と考えてよいわけでもないのです。
大切なのは、実際にいつから社会保険の適用要件・加入要件を満たしたのかということ。
法人設立日、役員報酬の決定・発生時期、実際の業務開始日、従業員を採用した日などを整理して、届出の基準となる日を考えましょう。
ステップ④ 保険料と納付方法を把握する
届出後は、決定された標準報酬月額や適用される保険料率などをもとに、会社と本人それぞれの負担額を把握します。社会保険料は毎月の会社経費にも関わるため、納付時期や金額を資金繰りの予定に組み込んでおくことが大切です。
⑸会社を作ったばかりだからこそ、最初の一歩を大切に
社長一人の会社。
社員もいない。売上もまだこれから。
そんな状況で社会保険の話をされても、なかなか実感が湧かないかもしれません。
でも、会社を設立したということは、個人事業とは異なるルールのもとで事業を運営していくということでもあります。
社会保険も、その一つです。
「社員を雇ってから考えればいい」
「売上が増えてからで大丈夫だろう」
そう思っていた方は、この機会に、ご自身の会社の状況を少し整理してみてください。
役員報酬は発生しているのか。
どのような仕事を、どの程度行っているのか。
ほかに会社で働く人はいないか。
そして、加入が必要な場合には、どのくらいの保険料負担が生じるのか。
こうしたことを一つずつ整理していけば、次に何をすべきかも見えてきます。
制度には、白か黒かだけでは説明できない部分がたくさんあります。
だからこそ、単に「加入するか、しないか」という結論だけでなく、その結論に至るまでの事情を理解することが大切なのだと思います。
会社を作ることがゴールではありません。
むしろ、そこからが本当のスタートです。
これから長く続いていく会社だからこそ、最初の一歩を大切にしていきたいですね。
社会保険の新規適用手続きでお困りの起業家のみなさんへ
「自分の会社は社会保険の加入対象になるの?」
「役員報酬が少ないけれど、どのように考えたらいい?」
「必要なのは分かったけれど、手続きが難しそう」
そんなときは、社会保険労務士事務所ユニットベンチャーズにご相談ください。
会社の状況に合わせて、社会保険・労働保険の新規適用手続きをサポートしています。
※本記事は社会保険制度の一般的な取扱いを説明するものです。実際の加入資格や届出の要否・時期は、法人の状況、役員報酬、勤務実態などによって異なります。個別の判断については、管轄の年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。


コメント